いろいろな紙の紹介とおすすめの使用法(画用紙、ケント紙、水彩紙)

目次
  1. 色んな紙
  2. 画用紙
  3. ケント紙
  4. 水彩紙
    1. オススメの水彩紙
    2. 原材料
    3. 紙肌
  5. サイジング/にじみ止め処理について
  6. 紙の厚さについて

色んな紙

画用紙、ケント紙、水彩紙など、私たちにとって一番身近な支持体、それでいてとても奥が深いのが紙です。

そんな定番かつ自由度の高い支持体である紙について詳しく説明します。

画用紙

おすすめの使用法

初心者の方や、マットな塗りと水彩風の塗りを一緒の画面で描きたいとき

表面に凸凹がある絵画用、工作用に使われる紙です。


水彩用に特化した水彩紙は高価なため、初心者でとりあえず描いてみたい人は画材屋さんで手頃な画用紙を購入してみてください。

ただし安いものや厚みの薄いものの中には水を多く使って描いたときに波打つことや毛羽立つことがあります。小学生の時画用紙を一枚渡されて水彩で描いた際に紙が大きく波打って描きづらい、何度も塗っていたら紙がボロボロになってしまった経験をされた方もいるのではないでしょうか。

波打つのがストレスのようなら水張りを施すことや厚めの水彩紙の購入を検討してください。水張りについては「水張り」で詳しく説明しています。

ケント紙

おすすめの使用法

ポスター調のマット塗り、デザイン画、コミックイラストなど

画用紙と違い表面が平滑なつるつるしている紙です。凸凹の目がないためアクリルガッシュを使ったマットなポスター調の絵やデザイン画を描くとき、製図用のペンやコミック画のつけペンを使うときに向いています。表面の強度が高く消しゴムをかけても鉛筆の黒が残りにくい、毛羽立ちにくいなどの特徴から、鉛筆やシャーペンの下書きも綺麗にできます。

水を強く弾くため水彩風の表現に向かないと言われることもありますが、発色が良いことや引いた線が綺麗に出て輪郭線がとりやすいなどの利点がありますので、出したいタッチによっては適する場合もあります。

水を多く使って描く場合は水張りをすることをおすすめします

水彩紙

おすすめの使用法

水をたっぷり使って水彩風に描きたいとき

主に透明水彩や不透明水彩(ガッシュ)で描く際に使われています。

アクリル絵の具を濃く溶いて厚くマットに塗ると、紙肌によっては折角の利点であるにじみやかすれの特性が失われる可能性があります。ほどほどに水分を含ませて描くことをおすすめします。

基本的にざらざらしている面や、紙に刻印されている透かしやエンボスの文字が正しく読める面が表です。ただし紙によっては表面を細目、裏面を中目として使うことができる製品などもあるので、自分の描きやすい面に描くことをおすすめします。

有名なフランス製高級水彩紙「アルシュ」やイタリア製「ファブリアーノ」をはじめとし、イギリス製「ウォーターフォード」、日本製「ワトソン」など、様々な水彩紙が製造されています。


オススメの水彩紙

アクリル絵の具を使う上でおすすめのものとして、株式会社オリオンが開発したアクリル画向けの水彩紙「アクリルデネブ」があります。

アクリル絵の具で描くとき、絵の具の乾きの早さと闘わなければなりませんが、この紙は保水力を高めることでアクリル絵の具でもグラデーションやにじみ、ぼかしを行いやすくしており、また絵の具に負けないよう紙の強度も高く開発されています。

紙の白さ、発色の良さが特徴で、細目と中目の二種類があります。


原材料

主にコットン(綿)、木材パルプ(針葉樹や広葉樹の木材)、非木材パルプ(一年草のケナフなど)が使用されています。

コットン

水彩紙でよく使われており、強度がありますが木材パルプなどに比べ高価です。毛羽立ちにくく、紙に絵の具が定着しやすい特徴を持っています。

酸性の紙は時間の経過とともにボロボロに劣化することがあり、木材パルプよりもpHが中性に安定しているコットンのほうが長期の保存に向いています。

紙作品の保存は特に紫外線、埃、湿度など様々なことに気を使わなければなりません。保存方法については「基本の保存方法 」で説明しています。

木製パルプ

コットンよりも安価でお手頃です。透明水彩絵の具などの水での再溶解可能な絵具では、紙に置いた絵の具が溶けだしやすい性質を持っています。

一方、アクリル絵の具では乾いた時点で耐水性になりますので、紙の乾きの早さや絵の具の発色、浸透力、保存性などで判断するのが良いと思います。


紙肌

水彩紙は表面に凹凸がついており、これを紙肌と言います。ぼかしや絵の具の乗せ方に直接かかわってくるため非常に重要です。自分の思う通りににじまない、かすれないなどがあったら紙肌を見直してみましょう。

また、にじみやかすれについてはサイジングというにじみ止めの処理にも影響を受けます。その強さも各メーカーによって異なるため、場合によってはメーカーやブランドを変える、水を全面に引いて乾かしてから描くなどの対策が必要となります。

紙肌の具合はメーカーから示されていますが、メーカーによって目の荒さの段階基準が違うため、下記は一応のラインとして参考し、実際店舗に行ってそれぞれのメーカーの紙を見比べることや、使ってみることをおすすめします。

細目(ホットプレス/Hot Press)

表面の凸凹を抑えた紙目にしたものです。製造工程で熱を加えながらプレスすることでキメの細かな表面にしています。

荒目よりも書き込みがしやすいため細い筆を使った細密画にも向いています。鉛筆での細かい下書きもしやすいです。また、紙に染み込みやすい特性により色が沈むことがあるため、にじみが出やすいことを生かした手法にも向いていています。

逆に発色の良い塗りやグラデーションにしたいときには向かないことがあります。ただし紙に水が染み込む度合いや発色にはサイジングも影響しているため、メーカーによって細目でも発色やにじみ度合いは異なります。

中目(コールドプレス/Cold Press)

凸凹をラフより抑えた紙目にしたものです。製造工程で常温プレスすることでラフより表面を滑らかにしています。

細目と荒めの中間の目で、初心者の方はこちらから試すことをおすすめします。もしもっと細かく繊細な描写をしたいと感じたら細目を、発色よいグラデーションやかすれ効果、大胆なタッチを出したいと感じたら荒目にします。

荒目(ラフ/Rough)

細目中目と違い表面を加工していない紙です。

水彩紙らしい紙肌のかすれやにじみが一番強調される紙です。表面の凸凹に絵具が溜まるため、細目よりも発色が良く出る傾向があります。しっかり輪郭をとって書き込む絵というよりは、荒目独特のぼかし、グラデーション、かすれでまとまった面や質感や量感を出す表現や、発色の良さでメリハリをつける様な描き方が良く見られます。

サイジング/にじみ止め処理について

紙はそのままの状態で水や絵の具で濡らすと、水を吸い込み縦横無尽ににじみ、毛羽立ってしまいます。紙が適度に水を弾くことで、紙面へ絵の具が沈みくすむのを抑えて発色のいい画面やにじみの時の輪郭線、美しい重ね塗りなどが実現できます。

この水を弾く度合いを決定する要因の一つがサイジング(sizing)というにじみ止め処理です。サイジングの強さはメーカーによって違うため、水を弾く度合いは様々です。水を多く含んだ筆で何度も描画するとサイジングは徐々に弱くなっていきます。

サイジングが強く絵の具が弾かれて描きづらい場合、絵を描く前に水を含ませた刷毛で表面を何往復かさせて乾燥させます。紙の厚みが薄く波打つ場合はパネルや木に水張りをした状態で行うのがおすすめです。

紙の厚さについて

基本的に厚ければ厚いほど水による波打ちが起こりにくくなります。ウェットオンウェット等の技法を使うとなれば厚いほうがいいですし、水を多く含ませなくてもよいのであればそこまで厚くなくても大丈夫なこともあります。

自分がどの程度の面積で、水の含ませ具合で描くのか把握して購入しましょう。予想より波打ってしまう場合には水張りを施すと波打ちが軽減されます。

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