描く前の大事な下準備 水張りのポイントを紹介

水張りとは

紙が水を含み波打つと、筆がガタついて思ったところに引けない、絵具や水がおかしなところに溜まるなどのアクシデントを招きかねません。そのような波打ちを軽減するための紙の準備が水張りです。

紙に水を含ませ、伸びた状態で平らになるよう張って固定することで、乾いたときに紙が収縮しピンと張られます。この状態で描くことで、紙が再度水を含んでも波を打ちにくくすることができます。

パネル張りと平張り

水張りは基本パネル張りと平張りの二種類があります。

作業工程は人によって異なりますが、目的ややり易さなどで使い分けていきましょう。

パネル張り

画材屋で販売されている木製パネルの側面で紙を張って固定します。

パネル画面いっぱいに描きたい場合や安定してイーゼルに立てて描きたい場合、描いた絵をそのままパネルで保存する場合に、この張り方にします。

平張り

パネル張りより手軽に張ることや剥がすことができます。紙より大きいサイズの厚い板やパネルに正面からテープで張ります。

板に張ってボードのように持って描きたい場合や、机の上に収まるサイズのイラストを描きたい場合などに向いています。

断ち切り(テープと紙面の境目)付近でアクリルガッシュなどの不透明な絵の具で塗りつぶしてしまうと、画面の断ち切りが隠れてしまい完成サイズが分かり辛くなりがちです。大きいパネルに小さめの紙を複数枚張ることもできるため、同じ線画で色味を変えて制作したい場合、同じ色味に合わせながら制作したい場合、タッチを合わせながら制作したいときなど、複数枚比較しながらの制作にも適します。

水張りの道具

  • 画用紙、ケント紙、水彩紙などの水張りしたい紙
  • 木製パネル
  • 筆洗器などの刷毛が入るサイズの水容器
  • 広い面積の刷毛
  • はさみ
  • 水張りテープ
  • シャーペンまたは鉛筆(平張りの場合)
  • 定規(平張りの場合)

水張りの注意点

紙について

パネル張りはパネルより一回り大きい紙を用意します。側面を覆いつくしてしまうとテープで留めにくいので半分くらい側面の木が見える大きさにカットします。

平張りはパネルや板より小さいサイズの紙を用意します。

パネルについて

アクが気になる場合はアク止め処理が施されているものを使う、濡らした雑巾で数回拭く、パネルにジェッソを塗るなどの対策を行います。

画面を汚さないために

机や道具が汚れていると紙に汚れが付着しますので綺麗な環境、道具で行います。

手が汚れていない場合は素手でも水張りできますが、手あかなどが気になる場合は画面を汚さないために手にタオルを当てて行います。

水張りの方法

パネル張り

パネル張り

画塾や人によって張る辺の順番などが異なります。ここでは張り方の一例をご紹介します。右手が利き手の場合で解説します。左利きの場合は手を逆にします。

パネル張り

  1. 紙をパネルの真ん中にかぶせ、目印としてパネルの角、辺の中央の縁で軽く折り目を付けます。紙が水で伸びて折り目の位置が変わるのでここでは軽い折り目で大丈夫です。
  2. 一番始めに目印としてパネルに合わせて折った状態。
  3. テープを四辺分、それぞれ6~8cmほど辺の長さにプラスしてはさみで切っておきます。側面にこだわらない場合は手でちぎっても構いません。(テープは水気を吸うと自身の糊で固まってしまいます。残ったテープはチャックの付いたビニール袋などで密閉して水に濡れないよう保管してください。)
  4. テープは長めに切って貼ります。
  5. 紙を裏返し、水を含ませた刷毛でたっぷりと裏面全体に水を引きます。最初にユニオンジャックのように対角線上や対辺に向かって十字を切ってから全体に引くと全面へ効率よく濡らすことができます。
  6. 紙が水によって伸びきるまで少し放置してください。放置しすぎて乾き始めていたら再度水で濡らして工程5に移行してください。
  7. 紙を裏返し、工程1でつけた目印に合わせて中央に配置します。
  8. 右手で画面中央側から各辺に向かって空気を抜きながら紙を押し伸ばします。この際パネルの縁で画面位置の折り目を付けて下さい。
  9. 刷毛でテープの糊面に水を付けます。二種類方法がありますので行いやすい方で付けてください。テープは水が付くと切手の裏面のように糊が溶け出し貼り付くようになるので、テープ同士を絡ませたり、うっかり画面にくっついたりすることのないよう注意します。
  10. a. 刷毛を適度に水で濡らします。テープ糊面が自分に向くよう左手でテープの先端を掴み、右手で左手の掴んでいる真下部分のテープ糊側と刷毛の毛先が当たるよう一緒に指で挟みます。右手の挟んだ指をそのままスーッと下におろすと上手くテープ全面に水が付きます。

    b. 刷毛を適度に水で濡らします。テープ糊面が自分に向くよう左手でテープの先端を掴み、その手を机の上に置きます。右手の刷毛で左手の掴んでいる真下部分のテープを机に押し付けて挟み込みます。左手をスーッと上に引っ張るとテープ全面に水が付きます。

  11. 濡らしたテープを張ります。テープは厚みの半分を紙、半分をパネルで固定をするため、まず半分のみ紙につけます。テープ両端は工程2で余裕を持たせているので3cm~4cmほど左右にそれぞれ余りが出るようにテープを張ります。
  12. 張りたい辺を机からはみ出させ、左手でしっかりパネルと紙を抑えます。
  13. 右手で画面中央から辺に向かって紙を抑えつけながらスライドさせ、縁で紙をしっかりと指で曲げテープをパネル裏側に巻き込むように留めます。これを辺中央側から両端側に向かって繰り返します。角は隣の側面に折り込みます。1辺張り終えたら対辺も同じ要領で留めます。角や両端の処理をおろそかにするとパネル四隅に皺ができてしまいますので、角はしっかりと空気を抜き密着させて張ってください。
  14. 角は三角形にたたんで折り込みます。
  15. 残った二辺をそれぞれ工程10と同じように留めます。
  16. 平らな場所で完全に乾燥させたら水張り完了です。

平張り

平張り
  1. 定規を使って紙にテープの張りしろとなる線を書きます。張りしろはテープの厚みの半分ほどにしてください。
  2. テープを四辺それぞれ長めに切っておきます。
  3. 紙を裏返し、水を含ませた刷毛でたっぷりと裏面全体に水を引きます。最初にユニオンジャックのように対角線上や対辺に向かって十字を切ってから全体に引くと全面へ効率よく濡らすことができます。
  4. 紙が水によって伸びきるまで少しの時間放置してください。放置しすぎて乾き始めていたら再度水で濡らして工程5に移行してください。
  5. 持った右手で画面中央側から各辺に向かって空気を抜きながら紙を押し伸ばします。
  6. 刷毛でテープの糊面に水を付けます。二種類方法がありますので行いやすい方で付けてください。テープは水が付くと切手の裏面のように糊が溶け出し貼り付くようになるので、テープ同士を絡ませたり、うっかり画面にくっついたりすることのないよう注意して下さい。
  7. a. 刷毛を適度に水で濡らします。テープ糊面が自分に向くよう左手でテープの先端を掴み、右手で左手の掴んでいる真下部分のテープ糊側と刷毛の毛先が当たるよう一緒に指で挟みます。右手の挟んだ指をそのままスーッと下におろすと上手くテープ全面に水が付きます。

    b. 刷毛を適度に水で濡らします。テープ糊面が自分に向くよう左手でテープの先端を掴み、その手を机の上に置きます。右手の刷毛で左手の掴んでいる真下部分のテープを机に押し付けて挟み込みます。左手をスーッと上に引っ張るとテープ全面に水が付きます。

  8. 工程1の書いた張りしろに合わせてテープで紙とパネルを固定します。右手で紙を押し伸ばしながら対辺も張ります。
  9. 残り2辺も右手で中央から空気を抜きながら張っていきます。
  10. 平らな場所で完全に乾いたら水張り完了です。

水張りの剥がし方

パネル張り

  1. 画面が完全に乾燥していることを確認します。
  2. カッターで側面にVの字に切れ込みを入れます。この切れ込みはVの下側が背面側、上側が画面に向かうように切れ込みを入れてください。
  3. 工程2の切れ込みから画面とパネルの間に長めに出したカッターを差し込み、パネルの縁に合わせてカッターを引いていき紙とパネルを切り離します。のこぎりのようにカッターを上下させながら引くと上手くいきます。紙の厚みや刃のコンディションで切れにくいことがあります。手元の狂いで描画面に刃が滑ることや怪我をしないように注意します。
  4. 紙とパネルを分離し終わったら、パネルの縁についたテープや紙を手でとります。

平張り

  1. 描いた絵の具が完全に乾いていることを確認します。
  2. カッターで切ります。
  3. パネル画面に残ったテープをはがします。はがれない場合は刷毛や筆を使ってテープを水で濡らし、しばらくしてからスクレーパー(scraper:へらの形をした付着物をそぎ取る道具)などを使って剥がしてください。
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